男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
シンデレラストーリーは作り上げるものらしいです
Serizawa World Groupビルは一等地にそびえ立っている。その一階に入っているカフェはSerizawa World Groupが経営するチェーン店の一つ。
「いや〜白井くんが入ってくれて良かったよ。覚えもいいし、人当たりもいいし、イケメン。女性客は、イケメンいるとほんと行儀良くなるから、イケメン大歓迎なんだよね」
店長の長尾さんは、偏見に満ち溢れていそうだ。
「女の子雇ってもさ、重いもの持てないとか、他の男性スタッフに甘えてゴミ捨て行かないし、使い物にならないから、やっぱり雇うなら白井君みたいな気がきく男に限るよね」
そして、履歴書や契約書を見ない人のようだ。性別は偽っていないのに男として見られている。
それにしても、このカフェ、人手不足すぎないか?
「あの、他のスタッフさんってまだですか?」
「まあさちゃんが来るはずなんだけどね。まあ、先々週入ったばっかで大忙しだし、藻風くんがもうすぐ辞めるって知って飛んじゃったのかもね」
ハイスピードでサンドイッチを作りながら、のんびりしたトーンで話す店長。こんな状況なのに、一切動揺する気配もない。バイトに飛ばれることに慣れっこなのだろうか。
「あと三時間もすれば藻風くんが来るからそれまで頑張ってよ」
こんなこと言われたら、普通の人なら飛んでも当然かもしれない。でも、私は、根性だけならその辺の人には負けないと思う。あの一年が、ここで生きるとは思いもしなかった。何が役立つかなんて、役立ってみないとわからないもんだ。
「すみません。注文いいですか?」
「はい。今行きます」
長尾さんを手伝う手を止めて、手を洗い、キャッシャーに向かう。このカフェは、カウンターで注文を受け、手渡すスタイルだ。配膳などしていたら、崩壊していただろう。システムに感謝しながら注文を受け、飲み物を準備する。コーヒーマシンは、全自動。朝、豆を入れ、牛乳を入れておけばあとはボタンひとつ。勝手にフォームドミルクも作ってくれるし、カプチーノだってボタンひとつで出来上がる。まさに文明の力。忙しくてもなんとか回せるのはこのマシーンのおかげだ。
台風が過ぎ去った後のようなお昼終わり、店内のゴミ箱は溢れんばかりのゴミと飲み残しのカップたち。フードの皿も所狭しと返却棚の置かれている。
店長と協力し、片付けていく。途方もない道のりだと思っていても、ひとつひとつ地道に続けることで道は開けていく。でも、まだまだ道のりは長い。
「うわ〜今日は一段とヤバいっすね」
耳元で聞こえてきた爽やかな声に驚いて振り返る。
「あ、注文ですか。すみません。すぐ行きますんで」
「いや、バイトっす。初めまして。藻風です。よろしくお願いします」
差し出してくる長い腕に繊細そうな手。シャボン玉が舞っているかのように錯覚さえする笑顔。
さ、爽やかだ。
「いや〜白井くんが入ってくれて良かったよ。覚えもいいし、人当たりもいいし、イケメン。女性客は、イケメンいるとほんと行儀良くなるから、イケメン大歓迎なんだよね」
店長の長尾さんは、偏見に満ち溢れていそうだ。
「女の子雇ってもさ、重いもの持てないとか、他の男性スタッフに甘えてゴミ捨て行かないし、使い物にならないから、やっぱり雇うなら白井君みたいな気がきく男に限るよね」
そして、履歴書や契約書を見ない人のようだ。性別は偽っていないのに男として見られている。
それにしても、このカフェ、人手不足すぎないか?
「あの、他のスタッフさんってまだですか?」
「まあさちゃんが来るはずなんだけどね。まあ、先々週入ったばっかで大忙しだし、藻風くんがもうすぐ辞めるって知って飛んじゃったのかもね」
ハイスピードでサンドイッチを作りながら、のんびりしたトーンで話す店長。こんな状況なのに、一切動揺する気配もない。バイトに飛ばれることに慣れっこなのだろうか。
「あと三時間もすれば藻風くんが来るからそれまで頑張ってよ」
こんなこと言われたら、普通の人なら飛んでも当然かもしれない。でも、私は、根性だけならその辺の人には負けないと思う。あの一年が、ここで生きるとは思いもしなかった。何が役立つかなんて、役立ってみないとわからないもんだ。
「すみません。注文いいですか?」
「はい。今行きます」
長尾さんを手伝う手を止めて、手を洗い、キャッシャーに向かう。このカフェは、カウンターで注文を受け、手渡すスタイルだ。配膳などしていたら、崩壊していただろう。システムに感謝しながら注文を受け、飲み物を準備する。コーヒーマシンは、全自動。朝、豆を入れ、牛乳を入れておけばあとはボタンひとつ。勝手にフォームドミルクも作ってくれるし、カプチーノだってボタンひとつで出来上がる。まさに文明の力。忙しくてもなんとか回せるのはこのマシーンのおかげだ。
台風が過ぎ去った後のようなお昼終わり、店内のゴミ箱は溢れんばかりのゴミと飲み残しのカップたち。フードの皿も所狭しと返却棚の置かれている。
店長と協力し、片付けていく。途方もない道のりだと思っていても、ひとつひとつ地道に続けることで道は開けていく。でも、まだまだ道のりは長い。
「うわ〜今日は一段とヤバいっすね」
耳元で聞こえてきた爽やかな声に驚いて振り返る。
「あ、注文ですか。すみません。すぐ行きますんで」
「いや、バイトっす。初めまして。藻風です。よろしくお願いします」
差し出してくる長い腕に繊細そうな手。シャボン玉が舞っているかのように錯覚さえする笑顔。
さ、爽やかだ。