灰を被らないシンデレラ
「あいつに家割られてんのは普通にキモい。憂もできるだけ早く荷物まとめておいてくれ」
こくりと頷くと、既に新居については目星をつけており事前に相談できなかったことを謝罪された。
「新しい家にはコンシェルジュをつける。仕事の合間に適当に探したからひとまずは仮の住まいだ。落ち着いたらちゃんとお前と相談して決める」
[忙しいのに探してくれてたの?]
「急を要したからな…あの女、あれで結構な会社の重役の娘なんだよ。だから金にモノ言わせて俺らの事調べ上げたんだろ」
そうか。
だからあんな自分の方が相応しいなんて自信満々なものの言い方をされたのか。
「俺もどうにかあいつのやった事立証できねえか手は尽くしてみたが、あのクソ女…外面だけは良いからなんせ隙がねえ」
そう言って柊は顔を悲しげに歪ませ、憂の喉元にそっと触れた。
「お前がこんな事になる前に決着つけたかったのに…ごめんな」
憂は首を左右に振った。
柊が忙しい合間を縫って自分の為にしてくれたことで十分だった。
この場所に住んでいる事を知られたと分かったのはおそらく先週のあの日。
2人が抱き合っていると勘違いした日だろう。
その日に喧嘩をしてしまいあんな離れ方をしてしまったけど、もしかしたら家に帰らなかったのはこの為に尽力してくれていたからかもしれない。
ーー十分な、はずなのだ。
それならば何故、自分はまだ上手く笑えないのだろう。
いつ戻るか分からない喉に触れながら、憂は柊の今後についての話を黙って聞き続けた。