灰を被らないシンデレラ



それから2週間経つが、憂の声は未だ出ないままだった。

大学にはすぐに復学した。
元より行動を共にする様な友達も学部にはいなかったので問題はなかった。


黎には会いに行ったけれど、父親からは何も聞かされていないのだろう。
風邪を拗らせたと説明すれば素直で優しい弟は早く治ると良いねととても労ってくれた。

サークルももちろん行けていない。
香里とは何度か学内のカフェテラスで会って雑談をしたが、話せない以上復帰はまだ難しそうだ。


そんな状態なのでもっぱら憂の外出は学校と、新しく引っ越したマンションとの往復くらいだ。

荷物の受け取りや柊が一時的に契約してくれた運転手の手配もコンシェルジュ任せだし、買い出についても休日に柊が請け負ってくれる。

沙里奈の行動が読めない今仕方が無いのだが、こんな塔の中のお姫様のような生活はいつまで続くのだろうかと時折急に不安になる。


柊も相変わらずだ。
基本的には遅い帰宅だが以前のように同じ布団で眠り朝を一緒に過ごす。

憂の身体を気遣って夜の営みが無い以外は、穏やかな日常が流れていた。

だからこその不安だ。


カウンセリングも定期的に受けているし、あれ以来父親とも会っていない。
もうとっくに心の傷だって癒えているはずなのに、どうしてまだ声は出ないのか。

このままでは本当にお荷物でしかないじゃないか。









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