灰を被らないシンデレラ
「俺の父親死別って言ったよな」
確か顔合わせの時にそんな事を言っていた気がする。
あまり興味が無くて聞き流していたけれど。
「あれ嘘。そもそも最初から居ない」
柊の顔を見れば、感情の読めない表情をしていた。
「分かんねーんだと。母親は何処の誰とも知らねえ男の子供を産んで育てた。それはそれで凄いと思うけど、ガキの頃はそれなりに色んな事言われてきたな」
親の事で好き勝手に言われる子供の気持ちは痛いほどに分かる。
自分は何もしていないのに、何故同じように悪く言われなければならないのか。
どうして理由もなく下賎なものを見るような目を向けられなければならないのか。
きっと柊も、自分とは違う形で辛い思いをしてきたのではないかと思うと胸が痛んだ。
「俺が同じだって知れば、お前が抱えてるもんも少しは楽になるんじゃねえかって、それだけだ」
柊の伸ばした腕が憂の肩を抱き、自身の元へと引き寄せる。
「お前は何も気にせず俺の隣に居ればいい」