灰を被らないシンデレラ
申し訳なさで居た堪れない気持ちでいると、不意に柊の口から「半年」という言葉が発せられた。
「え?」
「半年後には少し落ち着く。その時に少し遠出でもしよう」
「あ…」
やっぱりだ。
この人は両親とは違う。
きちんと自分の事を考えてくれる。
気を使わせてしまった心苦しさでいっぱいなのに、それ以上に嬉しいと感じてしまう自分がいる。
「ありがとう…」
きっと謝罪の言葉よりはこちらの方が喜んでもらえる。
すると思った通り、柊は口角を上げて笑った。
「存分に楽しませてやるから、首洗って待っとけよ」
「それは殺人予告ですか」
「るっせ。大人しく喜んどけや」
自宅への残りの道のりを車に揺られながら、憂は少し俯いて静かにゆっくりと微笑んだ。