今夜だけのはずが極上の彼に愛されて


「それ、もともとのデザイン画だよ」

「え?」

「紅羽ちゃんには、そのメモがない物をあえて渡したんだ」

確かに無茶振りしたとは言っていたけど…

「俺のメモを見てないのに、君はデザイン画を見ただけで見事に汲み取ってくれた」

確かに、この詳細に書かれた事は私が作った物とほぼ同じだ。

「そんな事は、君にしか出来ない」

そう言って真っ直ぐに見下ろされる。
その時やっぱりあのニューヨークの彼と重なった。

「俺のデザインした物を、作ってくれるんだろ? あの時…ニューヨークで俺にそう言ったよな?」

やっぱり…

私はハッと息を飲み両手で口元を押さえた。

「誠は…あの時の…あの時の彼なの…?」

「ああ。あの時、俺の背中を押してくれただろ?」

そんな…
私は何も…

「俺がこうしてデザイナーになれたのは、紅羽のおかげなんだよ」

急に呼び捨て…
ドクンドクンとあり得ない程に脈が激しくなっている。
< 118 / 288 >

この作品をシェア

pagetop