今夜だけのはずが極上の彼に愛されて
「それ、もともとのデザイン画だよ」
「え?」
「紅羽ちゃんには、そのメモがない物をあえて渡したんだ」
確かに無茶振りしたとは言っていたけど…
「俺のメモを見てないのに、君はデザイン画を見ただけで見事に汲み取ってくれた」
確かに、この詳細に書かれた事は私が作った物とほぼ同じだ。
「そんな事は、君にしか出来ない」
そう言って真っ直ぐに見下ろされる。
その時やっぱりあのニューヨークの彼と重なった。
「俺のデザインした物を、作ってくれるんだろ? あの時…ニューヨークで俺にそう言ったよな?」
やっぱり…
私はハッと息を飲み両手で口元を押さえた。
「誠は…あの時の…あの時の彼なの…?」
「ああ。あの時、俺の背中を押してくれただろ?」
そんな…
私は何も…
「俺がこうしてデザイナーになれたのは、紅羽のおかげなんだよ」
急に呼び捨て…
ドクンドクンとあり得ない程に脈が激しくなっている。