今夜だけのはずが極上の彼に愛されて
「き、緊張するっ」

「大丈夫だよ。紅羽も電話で話しただろ?」

「そ、そうだけもっ…」

「クハハっ! 噛んでる、噛んでる」

動揺のあまり噛んでしまった。

「これ、ちゃんと隠れてるよね!?」

私は今更首に付けられたキスマークを確認する。

「ははは。大丈夫」

こんなギリギリな場所に付けて…
あんたが付けたんだからね?
まるで人ごとのように笑う誠をジトっと見る。

「紅羽ちゃんごめんって」

そんな話をしながら待ち合わせのレストランへ向かう。

「誠」

そう呼ぶ声の先には、マフィアか? と思うような風貌の実にダンディな男性。
その隣には、絵に描いたようなエレガントな女性がいた。

「父さん、母さん」
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