今夜だけのはずが極上の彼に愛されて
「あなた、うちのプロダクションに来る気はない?」

は?

これには紅羽も流石に驚いて口を開けてしまっている。

「いやクリスティーナさん。勘弁してください本当に」

「はは。ますます一途なマットくん素敵ね。本当に食べてしまいたいわ」

そう言ってウィンクが飛んできた。
ゾワっと鳥肌が全身を覆う。

「僕には愛しい妻がおりますので、諦めてください」

本当に勘弁してくれ。

「かわいいわね本当に。またニューヨークに来た時にでも食事に行きましょう」

クリスティーナさんはそう言うとやっとこの場から離れた。

「ごめん紅羽ちゃん」

紅羽は俺を見ると一瞬だけ睨む。

だよな。
そうなるよな。

「私ちょっと外の空気を吸ってくる」

え?

「それなら俺も一緒に…」

「マットくん」

「ロバートさん」

俺は名前を呼ばれて目を離すと、視界の横で紅羽が一人離席したのがわかった。

行ってしまった。

「本日はありがとうございます」

「おや、奥さんは?」

「すみません、ちょっとだけ席を外すそうです」

その後も次々に挨拶に追われて紅羽を心配しながらも俺は動く事ができなかった。



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