今夜だけのはずが極上の彼に愛されて
「誠。顔を上げなさい」

そしてこれまで黙っていた母さんが声を出した。
その声は思ったよりも優しい。

俺はゆっくりと顔を上げると優しく微笑む父さんと母さんと目が合った。

「やっと言ったな。自分のしたい事」

「え…?」

父さんは俺の肩をバンと叩く。

「俺はデザイナーになるなとは言っていない。専門学校もいいが、大学に行ってしっかりとデザイナーの勉強をしなさい。それに、自分のブランドを持ちたいなら経営の勉強も絶対に続けるべきだ」

いいのか…?
会社は…?

「父さん…会社は?」

するとフッと笑う父さん。

「なぁに、そんな事子供が心配する事じゃない。俺はお前の夢を潰してまで跡取りにしたいとは思わない」

そして今度は打って変わって真剣な顔を見せた。

「むしろそんな半端な奴に、俺の大事な会社は任せられないな」
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