重ねる涙の先で仕合せは紡ぐ。
わたしの斜め前を歩く巡は、「いつもこんな時間に仕事終わってんのか。」と言った。
「うん、遅番だからね。」
「こんな時間に女1人で歩くのは危ねーよ。」
「でも、仕方ないじゃん。生きていく為だし。遅番の方が時給高いんだもん。」
わたしがそう言うと、巡は「まぁ、そう言われたら何も言えねーけど。でも、現にストーカーに遭ってるわけなんだから、気をつけろよ。」と言い、ダボッとしたスウェットのポケットに手を突っ込んだ。
それから5分程歩くと、1階部分にデイサービスが入った3階建ての鉄筋コンクリート造りのアパートに着いた。
「ここ、俺んち。」
そう言って、巡はアパートの裏側に回り、入口であろうドアを開けた。
木造のボロアパートに住むわたしには、鉄筋コンクリート造りのアパートが立派に見えた。
入口のドアから中に入ると階段があり、2階まで上って行く。
その2階の一番端の201号室が巡の自宅らしい。
「はい、どうぞ。」
巡はドアを開け、自分が先に玄関に入ると、さっさと中へ入って行く。
わたしは玄関に入ると、ドアを閉め「鍵閉める?」と訊いた。
「あー、一応閉めといて。」
巡の言葉に玄関の鍵を閉めたわたしは、「お邪魔します。」と靴を脱ぎ、遠慮がちに中へ入って行った。