重ねる涙の先で仕合せは紡ぐ。
「おう、花恋。今帰り?」
巡はそう言いながら、ブラック珈琲のボタンを押し、取り出し口に落ちてきたブラック珈琲を取り出した。
「ちょっと助けて。」
わたしは小声でそう言い、巡に駆け寄ると、思わず巡の腕を掴んでしまった。
「え?どした?」
「おっと、ごめん!」
わたしは慌てて、巡の腕を離し、一歩下がった。
「助けてって?何かあったのか?」
「後ろから誰かついて来るの。多分、山内くん。」
「山内くん?」
巡はそう言うと、わたしが歩いて来た方向を見た。
そして、「あぁ、何か電柱の陰に誰か居るな。」と言い、続けて「山内くんって、お前の知り合い?」と言った。
「違う。お店の常連さん。」
「何で名前知ってるんだよ。」
「わたし買取の仕事してて、その時に名前書いてもらうから知ってるの。」
「あー、なるほどなぁ。」
巡は、山内くんが居るであろう方向をしばらく見ていると、「んー、居なくならないなぁ。ついて来い。」と言い、わたしの家とは違う方向へ歩き出した。
「え、わたしの家そっちじゃない。」
「馬鹿か、お前。このまま帰ったら、家特定されるだろ。」
「あ、そっか。でも馬鹿は酷くない?」
わたしがムッとしながらそう言うと、巡は鼻で笑い、「黙ってついて来い。」と言った。