重ねる涙の先で仕合せは紡ぐ。
わたしは話を逸らそうと、「め、巡は何でこの辺に引っ越して来たの?地元は?」と訊いた。
「地元は小樽。小さい頃に両親なくしたから、じいちゃんばあちゃんに育てられたんだけど、2人とも亡くなって、大きな家に1人で住むのも広過ぎるから札幌に引っ越して来た。」
「そうだったんだ。」
「花恋は?親は?」
そう言うと、ブラック珈琲を飲む巡。
わたしは「親の顔知らないんだぁ。わたし、孤児院育ちだから。」と言った。
大体の人はそれを聞くと、訊いてしまったことに対して「あ、ごめん。」と謝るのだが、でも巡は違い、「へぇ〜、孤児院か。どんなとこなの?」と訊いてきた。
「朝起きる時間も決まってて、ご飯食べる時間も寝る時間も、何もかも時間通りに生活して、何の楽しみもない場所。みんな未来に希望なんて無い。目に光もない。そんな場所。」
わたしがそう話すことを真剣に黙って聞いている巡。
ここまで人に話したことは初めてだった。
「18歳になったら、外に放り出されて、これからは自分の力で生きて行きなさいって。でも行く宛も無いし、わたしは自分の体を売ってお金を稼いで、その日暮らしの生活をしてた。だから、わたし、、、汚いんだぁ。引いたでしょ?」
わたしの言葉に巡は表情も変えず、「いや、引いてないよ。」と言った。
「だから、お前、、、雨が穢れを洗い流してくれる気がするとか言ってたのか。」
巡がそう言うので、わたしは「まぁ、そうゆうこと。」と笑って見せた。
「お前、体張って、必死に生きてきたんだなぁ。凄いよ。」
その巡の言葉を聞き、心の中で何かが弾けた気がした。
そしたら、自然と涙が溢れてきた。
自分でも驚いた。
わたし、何で泣いてるんだろう。