君との恋は面倒すぎる
 元々運動部だった蒼空くんから私が逃げ出せるはずもなくて、簡単に腕を掴まれる。

 蒼空くんは私の身体を彼の方へ向かせ、顔を覗き込んでくる。


「体調悪いとか言いながら走らないで。元気じゃん」


 少し焦ったような声に何も言えなくなる。


「何で追いかけてきたの…」

「放っとける訳無いでしょ。どうした」


 私の肩を掴んで屈んで目線を合わせてくる。

 優しく聞いてくれてるのに頭の中ぐちゃぐちゃでどうしたら良いかわからない。蒼空くんが悪いわけじゃなくても、一緒になんて来てほしくなかった。


「蒼空くん」

「うん?」


 私が話し始めるのをゆっくり待ってくれている。

 こんなに優しいのに今はその優しさが嫌になる。

 そんなに優しいから好かれちゃうんだよ。


「…ごめん、やっぱ今日は話せそうにない」


 そう言って顔をそらすと、蒼空くんの肩を掴んでいる手から力が抜けていく。


「何で?俺何かした?」

「…今は話したくない」


 そうはっきり言うと蒼空くんが傷付いた顔をするのが見えた。

 こんな言い方間違えてるって分かっているのに。


「…わかった。明日、また話せる?」

「…うん」


 そう返事をすると無言の間が続く。


「ごめん、少し考え事するから、先戻ってて」

「…海風あたりすぎないようにね。また明日」


 そう言って額に口付け、ホテルの方へ歩き出す。

 そんな蒼空くんの背中をずっと見つめていた。
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