君との恋は面倒すぎる
───Side 紗月


「ねぇ、わざとでしょ。あんた」

「え?」


 柊くんと一緒に楽しそうに歩いてきた茉莉に声を掛ける。

 彼が本当に日和を探しに来ただけにしても、彼女までついてくる必要なんてなかった。

 だって、ビーチにいるって一言伝えればいいだけの話なのだから。


「今日の水族館から、今の今まで。柊くんと日和の邪魔してるんだよね?」


 単刀直入に言葉にすると、傷付いたような顔をして「そんなこと…」と言っている。

 それすらも白々しく見えた。

 彼女はおそらく、計算高くそういうことが出来る女性だ。


「もうそういう白々しいのいいよ。私、日和と違ってあんたを信じるとか出来ないし。なんなら邪魔してたって言われたほうが清々しいわ」


 そう言って笑うと、茉莉が拳を握りしめるのが見えていた。

 おそらく図星だと思う。

 別に柊くんを好きなことを軽蔑してるんじゃない。
 そのアピールの仕方が嫌いなだけ。

 日和があんなに悩んで信じようとしてる女はこんな女だよ。
 本当にまだ友達で居たいとか言うの?

 私はそんな日和のお人好しなところが好きな反面、すごく不安になるし苛立たしい。日和に対して腹が立つのではない。その彼女の人柄を、馬鹿にする様に、近くにいて利用するような人間が大嫌いだ。

 日和なら騒がないと思っているその魂胆が見え透いている、この女が私は嫌いだ。


「…好きになったら悪いの?友達の彼氏だったら諦めなきゃいけないの?私のこの程度の邪魔で揺らぐならそれまでじゃないの」

「悪くないし、あんたがその程度とかいうのはムカつくけど、そのとおりだと思う。でも…、日和があんたが柊くんを好きだとしても、友達で居たいって言ってる気持ちを踏みにじっておいて、日和の前ではなんでもないですってふりをして柊くんに近付く、あんたみたいな卑怯な女が大嫌いなだけ」


 はっきりそう言って、茉莉の隣を通り過ぎる。

 これ以上彼女となんて話すことはない。

 それにしても、柊くんも意外と鈍い…?
 本当にこの人の好意に気づいてなかった?
 いや、断ったけど着いてきて仕方なく、だろうな。柊くんの性格的に。

 柊くんは女子と話す方じゃない。
 それは中学からずっと。

 信じてるから、傷つけないでよね。日和のこと。
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