君との恋は面倒すぎる
 それから、秋になると推薦の願書の提出が始まって、試験はいよいよ来月に控えていた。

 蒼空くんは当然のように指定校推薦の枠を取ってきたけど、私は結構ギリギリだった。枠が取れたからって油断出来る訳でもなくて、ここ最近は毎日教室で残って勉強している。

 私が教室で残るようになると、自然と紗月や蒼空くん、薫くんまで一緒に残ってくれるようになった。

 蒼空くんは隣で時々私が解いているのを見ながら、間違えていたら指摘してくれる。


「ここ違うよ 」

「あれ…?」


 消しゴムでその箇所を消して、消しカスを机の端に避ける。


「蒼空は寂しくないの?日和ちゃんと離れるの」


 薫くんの急な質問に蒼空くんは頬杖をつきながら、視線を薫くんの方に向ける。


「さあ、その時になったら寂しいんじゃない?」

「はあ?素直に寂しいって言えよ、めんどくせっ」


 薫くんは茶化すように言っていたけど蒼空くんは、無表情で自分の参考所に手をつける。

「薫、うるさい」


 紗月がそう薫くんに言うと、彼はつまらなそうな顔をしていた。

 蒼空くんはそもそも人前で感情をそんなに出す方でも、話す方でもないから、人前だと随分冷たく感じるかもしれないけど、そんなことはない。むしろちょっと面倒くさいところも好きだから、私は気にしていない。

 両手で口元を覆って口元の緩みを隠していると、薫くんの呆れたような顔が目に入る。


「何でそんな幸せそうな顔出来んの。今そんな要素あった?」

「え、この面倒さが可愛いと思わない?」

「日和ちゃんの趣味わかんねー」


 苦笑いする薫くんに私は分かってないなあとやれやれといったジェスチャーを取って蒼空くんを見る。

 蒼空くんは変わらず参考書に視線を落としたままこちらの会話には耳だけ傾けている。もはやツッコむ気も無いらしい。

 それにしても、横顔すらも格好いいってどういうことなんだろう。ふと笑った顔は可愛いし、その真剣な顔は格好いいし、特に何も考えてないボーっとした顔も気が抜けてて可愛いし、ブサイクな瞬間あるのかな。


「日和、集中して」


 あまりにも見すぎていると、蒼空くんに注意され、ハッとする。

 最近デートとかそんな時間は取れないけれど、残りの学校生活をこんなふうに一緒に過ごせるのは嬉しい。

 残り半年、たくさん楽しもう。
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