君との恋は面倒すぎる
 卒業式がいよいよ始まった。

 出席番号順に列を乱れなく並んで、壮大な音楽とともに入場し、指定の席に着く。

 この体育館で今まで当たり前のようにこうして並んでたはずなのに、何だか変な感じだ。入学式のあの日の様に、また引き締まった心地がする。

 いくつか隣のクラスの横を見ると蒼空くんが見える。
 蒼空くんはこちらを全く見ていないけど。

 なんだか、感極まってすごく泣きそうになる。

 一年の時もこの体育館で、同じクラスの蒼空くんを見て、胸が熱くなったのを思い出した。その時は一緒の高校に通えてる嬉しさでだったけど。

 あの時よりも身長が伸びて更に格好良くなった蒼空くん。
 高校の始まりも今もずっと蒼空くんしか見えてない。
 ここでこの人と恋が出来て、よかった。

 式が始まってしばらく、国家や校歌の斉唱を行い、そこから卒業証書の授与へと流れが進んでいく。いつもこの瞬間はあまり実感が湧かない。

 実感が訪れるその時は、校長先生から卒業証書を渡されるあの瞬間だ。担任が名前を呼んでくれる瞬間も、戻る時友達と目が合うあの瞬間も、すべてが尊いものに感じる。

 緊張はするけれど、この時間嫌いじゃない。

 先に私達のクラスが一名ずつ呼ばれる。


『鈴村 紗月』

「はい」


 紗月の凛として立派な姿は、周りの目を引き付けた。

 中学の時からずっと親友で居てくれた紗月。私の悪いところとかはっきり指摘してくれて、それでいてこういう所大好きだよって伝えてくれる紗月が、私も大好き。これからもずっと変わらず親友で居たいって思える唯一無二の存在。

 そういろいろと考えている内に私も席を立って移動する順番まで来ていて、周りと同じように並ぶ。この呼ばれるまでの間は、いつもかなりそわそわしてしまう。深呼吸して、ほんの落ち着かせる。

 何人かが呼ばれた後、自分が名前を呼ばれる順番になった。


『七瀬 日和』


 マイクを通して丁寧に噛み締めるような先生の声で、自分の名前が呼ばれ体育館中に響き渡る。


「はい」


 あまり大きな声は出なかったけれど、堂々と返事をして校長先生の前に立つと、教頭先生から卒業証書を受取りそのまま渡してくる。


「おめでとう」

「ありがとうございます」


 小さな声でそうやりとりをし、両手で受け取るとそのまま降壇して無意識に蒼空くんの方を見た。するとふと目が合って少しだけ微笑んでくれた。その優しい笑顔大好き。

 私も笑い返して自分の席に戻っていく。
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