君との恋は面倒すぎる
「なんかいつも貰ってばっかで…、何か欲しかったりするものないの君。」


欲しいもの…、欲しいものかあ。

物欲は基本的にそんなに高くないから突然聞かれても困る。

あ、ひとつだけあった。

私が欲張りで我儘になれること。


「じゃあ、思い切りぎゅって抱きしめて欲しい。」


そう言うと「そんなこと?」とでも言いたげに笑って、席を立ち上がった蒼空くんが私の腕を引いてそのまま閉じ込めてくれた。

このお願いを当たり前のように聞いてくれる。

それだけの事が嬉しかった。


「御礼にならないけどこれ。というかお礼じゃないとしないみたいな言い方しないでくれる?」


そう言って呆れるような声を出す蒼空くんに少し笑ってしまう。

本当に、これ以上に欲しいものなんてない。

欲しいのは私だけがずっと使えるこの居場所だけ。
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