龍神島の花嫁綺譚

 気怠げな立ち姿さえ美しい白玖斗の横顔をじっと見つめていると、ふいに目が合う。だが、その喜びに浸る間もなく視線がそれた。

 どこかに向かって歩き出した白玖斗が、ふと何か思い出したように振り返った。

「紅牙、そういえば、南の邸宅の女たちがおまえのことを探していたぞ」
「はあ? なんで」
「おまえが最近、南の邸宅をほったらかしだからだろう。目を離すとすぐに消えてしまうと絢子(あやこ)が愚痴っていた」
「ああ……」

 額に手をあてた紅牙が、面倒くさそうに顔をしかめる。そこへ、白玖斗が追い討ちをかけるようにクツリと笑った。

「居場所に検討がないかと聞かれたので応えておいだぞ。おそらく西の邸宅だろうと。まもなく、他の娘を何人か引き連れて探しにくるだろう」
「いやいや。何余計なことしてんだよ、白玖斗」
「早く止めに行かないと、また厄介なことになるんじゃない?」

 含みのある黄怜の言葉に、紅牙が小さく舌打ちをする。

 絢子を筆頭とする南の邸宅の女たちは、紅牙が陽葉にかまいすぎだとやっかんでいるのだ。
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