Dearest 1st 〜Dream〜
『いつか……
あたしもまた前向こうって思えるのかなぁ…?』
呟くようにそう言った彩に、俺は強く頷いた。
「……大丈夫。
絶対、彩は前に進める。」
──…夜が明けて朝が来るように、
今抱えている悩みも、
いつか明ける日が必ず来るから。
凍てつくような悲しみに染まる深海にいたとしても、
必ず、向こう岸に辿り着けるから。
いつになろうとも、
笑える時が絶対に来る。
今が苦しくて前さえ見れなくても、時間が経てば必ず足跡を振り返れる時が来るから。
だから、
だからどうか───…
「彩、また近いうちに会いに行くわ」
『……え?』
「だから、その時は…」
『……?』
「───笑ってな?」
それだけでいいよ。
笑うことが苦痛なら、
俺が笑わせてあげるから。
『───…うん……
……ありがとう……』
彩は何度も涙声で感謝の言葉を口にして電話を切った。
───…電話を切った後に、ふと空を見上げた。
月が、空に物悲しく浮いている。
何故か、彩と頼りなく空に光る月とが重なった。
今にも消えそうな弱い月の光に、俺は呟いていた。
──“どうか消えないで”と。