Dearest 1st 〜Dream〜
『前を向くのをやめる─…?』
俺の返答があまりにも意外だったんだろう。
彩は少し驚いたような、
でも同感しているような、そんな声を出した。
「うん。
俺は前を向きたくないんやったら前向けへんけどな。
だって、本心はちょっとでも前向くの嫌ってことやろ?」
『……』
「前を向きたくなるまで立ち止まってるよ、俺は。
……そんな答えもありちゃう?」
……実際、俺がそうだから。
色も輝きも煌めきも、
温かさも優しさも幸せも、
何もない、ただ無情で漠然と流されていた世界で。
探している物が一体何なのかも分からず、ただ宛てもなく彷徨っていた。
──そんな中、現れたのが君だったから。
その瞬間に、今まで立ち止まっていたのが嘘のように俺の時間が動き出した。
だから、
無理やり前を向こうとするより、自然と歩み出せる時を待つ方がいいんじゃないかと俺は思う。
静寂の中───…
「……そうだよね…」
彩は、ホッとしたようにそう答えた。