Dearest 1st 〜Dream〜





───ガチャ。





吾郎が扉を開くと、傘を畳んでいるマリアの姿。





「…お疲れ、お邪魔。」





「おー。お疲れ。」





マリアはいつものように単語でそう言うと、スタスタとこちらに寄って来た。






……いつもなら、マリアは煙草をふかし始めるのに──…






「───ねぇ、純。」






珍しく、そう発言して来るから俺は顔を上げた。





「ん?何や珍しい……」





「──そこでチカを見たわよ」






マリアは間を入れず、ズバッとそう言った。







「…………は?」





瞬時に鉛筆を持つ手が止まる。






────ドクンっ…。






鈍く重い鼓動を刻む心臓が痛い。





………チカが?




どうして?






「なになに?一人で?」





声が出ない俺の代わりに、壱がそう問う。






───…シュボッ…。






マリアは煙草を加えZippoの火を灯し……






「ううん、一人じゃなくて違う男と歩いてた。」







──意外な事実を口にした。




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