Dearest 1st 〜Dream〜
発信ボタンを押し、受話器に耳を当てる。
チカに自分から電話するなんて、いつぶりだろう?
…………。
思い出せないくらい、それはとうの昔な気がする。
───…が、その瞬間……
────プッツーツー…。
「……あれ…?」
ディスプレイには、切断中の文字が……
話し中?
電話を何回掛けても繋がる気配はいっこうにない……。
「……おっかしいなぁ…」
「チカちゃん?」
晩飯を食いながら、吾郎が声を掛けてくる。
「うん、何回か電話してるけど誰かと話し中で繋がらんねんよな……」
───パチン。
ケータイを閉じ、俺は溜め息を付きながら吾郎が作ったカレーに目を向ける。
「新しい彼氏と話し中なんじゃないのっ?」
壱の声に、そうかと思考が切り替わる。
「あー、ありえるかもな。また時間空いてから掛けようかな。」
「それでいいんじゃない?
……ま、今は純が邪険にされるだろうけど。」
マリアの毒を笑ってスルーした。
まだ、この時は。
チカの罠にハマって行ってるなんて思いもしなかったから。