Dearest 1st 〜Dream〜





「お袋が死んだのって俺が小三の時やし…




ほんまに、あんま記憶に残ってないんやけど…」





「……うん。」







「……一言で言うと





“優しい”、やろな。」





「………」







たとえ時間が流れても、




いくら記憶が色褪せても、






今でもお袋の優しい笑顔を忘れた事はない。






お袋はいつでも太陽みたいに明るくて、




月みたいに穏やかな人だった。






口癖はいつだって、





“弱い人を見捨てるな”。






誰よりも気高くて




誰よりも優しくて






そんなお袋が俺は好きだった。






歌を歌うのが大好きで、




よくキッチンで鼻歌を歌いながら料理をしていたお袋の後ろ姿を、俺は今でもハッキリ覚えている。








「──…じゃあ純の優しさは、きっとお母さん譲りね…」






「……違うよ。



俺は全然優しくない。




親父譲りのどーしようもない男やよ。」






……むちゃくちゃ本気でそう答えたつもりだったんだが──…






チカはくすくすと笑い、






「……あたしがそう思うのは勝手でしょ?」







……そう笑い、お袋が眠る墓を見つめた。



< 222 / 402 >

この作品をシェア

pagetop