Dearest 1st 〜Dream〜
「お袋が死んだのって俺が小三の時やし…
ほんまに、あんま記憶に残ってないんやけど…」
「……うん。」
「……一言で言うと
“優しい”、やろな。」
「………」
たとえ時間が流れても、
いくら記憶が色褪せても、
今でもお袋の優しい笑顔を忘れた事はない。
お袋はいつでも太陽みたいに明るくて、
月みたいに穏やかな人だった。
口癖はいつだって、
“弱い人を見捨てるな”。
誰よりも気高くて
誰よりも優しくて
そんなお袋が俺は好きだった。
歌を歌うのが大好きで、
よくキッチンで鼻歌を歌いながら料理をしていたお袋の後ろ姿を、俺は今でもハッキリ覚えている。
「──…じゃあ純の優しさは、きっとお母さん譲りね…」
「……違うよ。
俺は全然優しくない。
親父譲りのどーしようもない男やよ。」
……むちゃくちゃ本気でそう答えたつもりだったんだが──…
チカはくすくすと笑い、
「……あたしがそう思うのは勝手でしょ?」
……そう笑い、お袋が眠る墓を見つめた。