Dearest 1st 〜Dream〜
───…数十分ほど車を走らせれば、文化祭以来になる高校が見えてきた。
「…………」
正直に言えば、俺の時間は止まったままだ。
あの文化祭からというもの──…
俺はこの行き場がない感情を、一体どう整理したらいいのか全く分からなかった。
……それに、
こんな気持ちのまま彩に会ったらどうなるかなんて、見当もつかない。
「朝岡さんっっ!!
チカさんっっ!!
キャー!!お二人が来てくれるなんて感激ですっ!!」
部室のドアを開けるやいなや、チヒロに熱烈歓迎を受けた俺達。
「チヒロちゃん大袈裟だなぁ~。
はいっ、純とあたしから差し入れ♪
みんなで食べてね~♪」
俺が先程コンビニで購入した差し入れをチカが渡し、みんなでワイワイガヤガヤと賑やかなお喋りが始まった。
────……プシュッ!
窓際にもたれかかり、
缶コーヒーを開けて無心で外を見つめていた俺の耳に──……。
「キョーコちゃんね♪
あたし、チカっ★
よろしくね~♪」
「よろしくお願いします♪チカさんっ♪」
彩と同期のキョーコとチカが、初めて会話を交わす声が聞こえた。
──…チカはだいぶ普段と変わらない様子にまで回復していた。
その明るさが“戻った”ものなのか、
はたまた“無理に”明るく振る舞っているのかは分からないが──…
「…………純~?
ね、話聞いてる??」
「────……え?」
いきなりチカに話題を振られた事に驚き、パチパチとまばたきを繰り返す俺。
「まぁぁぁた話聞いてないの!?!?
ったく!!!!
今キョーコちゃんの恋バナしてるの!!!!
純もしっかり相談聞きなさいっっ!!!!」
────グイッ!
「……てっ!!!!」
チカに無理やり引っ張られ、俺は見事に話の輪の中に入れられてしまった。