Dearest 1st 〜Dream〜
「……にしても、ここすごい穴場よねぇ……
さっすが純♪」
マリアはビールを片手に、見事に咲き誇る桜を見上げた。
「桜も素敵だけどゴローちゃんのお弁当も素敵だよーっっ♪」
「……お世辞はいらないよ、壱。
純、ほら好きなの取れよ。
お前の好きなもんばっか詰め込んだんだから。」
「……サンキュ♪マジうまそっ♪」
「食えそうか?」
「いやむしろ食いまくる♪」
俺は気遣う吾郎ににっこりと微笑み、色とりどりに詰め込まれた弁当に手をかけた。
───今日は花見。
三人(ほぼ壱が中心)が、
花見がしたい、花見がしたいと連呼した為、俺はここへと連れて来た。
退院して、冬をまるまる静養にあてた俺を気遣ってくれてるからか、
はたまた、いつも出演している春の恒例イベントライブから気を紛らわせてくれているからか──……。
………多分、どっちもだと思う。
この時期は、毎年“ライブ、ライブ”とメンバーを怒鳴りながら練習していた俺はもういない。
──…『春=ライブ』、
という方程式を、少しでも紛らわせようとしてくれる仲間の気持ちが、遠回りに伝わってくる。
歌えなくて、曲も作れなくなったこんな役立たずを、今でも変わらずに接してくれる。
「………ん~~~ッッ♪
うーまーいー♪
やっぱ吾郎の料理は最高やしー♪」
「あ゛ぁぁぁっ!!
ちょっと純、それオレの唐揚げだってばぁぁぁ~!!」
「ケチケチするんじゃないわよ、猿のくせに。」
「むっきー!!!!!!!」
「………ったく。
ほら壱、俺の唐揚げやるよ。」
「きゃぁぁぁ!!!!
やっぱりゴローちゃん優し~いっっ♪
意地悪で根性悪な純とマリアとは大違いだぁ!!!!」
「「……何だって~?」」
「っキャァァァァ~!!
鬼が二匹ぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!」
───…そんな……
温かすぎるほどの優しさ、思いやりが……
──…今の俺を支えていた。