隠れ執着外交官は「生憎、俺は諦めが悪い」とママとベビーを愛し離さない
「そうですね。私も器が好きです」

 他愛ない話するうち、ふと喜代子さんが「実はね」と言った。

「主人の退院の目処が立ったの」

「そうですか! それはよかったです」

「まだ無理はできないけど、順調なら来週からでも少しずつお店に立てるかもしれないわ」

「すごいじゃないですか」

 明るい知らせだが、となると、私は次の仕事を探し始めなければいけないわけで……。

 でも、それはそれ。暗い顔をしてはいけない。何よりもご主人の復帰が第一だから。

「それでね。相談なんだけど。香乃子ちゃん、ここで昼の営業してみない?」

 にっこりと微笑んだはずが、そのまま固まった。

「昼の営業、ですか?」

「ランチだけだとそうそう利益は出ないかもしれないけど、料理が余っても夜に出せるし、香乃子ちゃんの腕なら常連さんがつくと思うのよ。お客さんからも昼もやってほしいって声があるの。どう? ゆっくりでいいからちょっと考えてみて」

「あ、ありがとうございます。よく考えてみます」

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