【コミカライズ原作】副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「七瀬」と名前はついているものの、世襲ではなく優秀なものに継がせると常々言われていたせいか、勉強も運動も全て頑張った。そして大体どれもオール5、テストも1位を連発していた。
中高一貫校に進学したから高校受験はないが、みんな有名大学に進学することだけを目標にしており、その後のキャリアについて考えている人はほとんどいない。
良い大学に進学して、その後は七瀬ホールディングスに入る……でも、それで本当に良いのだろうか?
父や祖父にはなかなか相談しづらいし、最近はやけにバタバタと忙しそうだった。誰かのお通夜だとか、その人がいなくなった後の体制とか……そんな話を耳に挟んだ。
将来について悩んでいたこともあって、またホテル・ザ・クラウンに行くようになった。
この日はホテルに入ろうと外を歩いている時だ。
ランドセルを背負った女の子が、うずくまって泣いていた。
(あれ? もしかして……)
つい、話しかけられずにはいられなかった。澪の面影があったからだ。
「澪ちゃん? どうしたの?」
「ひっく… お兄さん、誰? 会ったことある人?」
「うーん、そうだな。あーくん、かな? うん、前に会ったことあるよ」
「自分であーくんって言うの、なんか変」
澪はじーっと俺を怪しむように見ている。
前回会った澪が幼かったから覚えていないのか、俺が成長して随分変わったから分からないのか、どちらにせよ『あの時のことを忘れられた』という事実にショックを受けていた。