副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
私知らないよ、こんな副社長。
もしかして、違う誰かが副社長の中に入ってるんじゃないの…? そんな疑いまで生まれるくらい、別人のように感じていた。


「よし、行こうか」
「はい、お願いします」


運転する飛鳥さんを横目でチラと見る。

ホテルで着ているスーツとは違い、白シャツの上にベージュのジャケット、パンツを合わせたカジュアルな装いだった。


(飛鳥さん、かっこいいな…)


え、私今かっこいいって思った?
あの第一印象最悪な副社長に?

最近急に話す機会が増えて、過去のイメージがどんどん塗り替えられている気がする。


車を20分ほど走らせた場所に、母が指定したフレンチレストランはあった。駐車場に車を停め、早速2人で店内に入る。



ーーーカランカラン

 
「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」
 
「はい、北原清香(さやか)の名前で予約していると思うのですが」

「北原様ですね。先にお連れ様がいらっしゃっております。こちらにどうぞ」

 
スタッフの方の後に続いて、指定されたテーブルに向かう。母と弟、薫さんの3人が既に座っていた。

 
「みんな、久しぶり!待たせちゃった?」

「ううん、私達もついさっき来た所よ」

「飛鳥さん、こちら、母の清香です。隣が弟の蓮、そして母の再婚相手である、薫さんです。こちらはお付き合いしている、七瀬飛鳥さん」
 

それぞれの紹介を簡単に済ませ、各々挨拶をする。上手くこの場を乗り切れるか、少し不安は残るが「やるしかない」と腹を括った。
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