副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「飛鳥さん、宜しくお願いします。澪の母です。今日はお会いできるのを楽しみにしておりました」
「私も澪さんのご家族にお会いできるのを、楽しみにしておりました。宜しくお願い致します」
深々とお辞儀をする飛鳥さん。こう見るとホテルマンさながら、綺麗な礼だ。
「ふふ、飛鳥さん、とても素敵な人ね。ここのフレンチ、とても美味しいの。堅苦しいのは抜きにして、早速ご飯をいただきましょう!」
そう言って、皆で席に座る。ウェルカムドリンクから始まり、アミューズ、季節の前菜3品、メイン料理と進む。
メイン料理は和牛とフォアグラのロッシーニ、魚のポワレなどから選ぶことができた。どれもとても美味しい。
ご飯も進むが、母のおしゃべりもよく進む。私が飛鳥さんに話していないことも、まぁ、よく喋ってくれた。
「飛鳥さんは七瀬ホールディングスの副社長なんですね。びっくりしたわ。私と、澪と蓮の父親は、ホテル・ザ・クラウンで出会ったんですよ。私はホテルメイドのパートで働いていて、お父さんは客室課のボスで。客室課支配人、というのが正しい呼び方かしら。飛鳥さんはそのこと、澪から聞いてる?」
「いえ、詳しくは」
そう言った時、弟の蓮がぴくっと反応した。先程から口数が少なく、何を考えているのかよく分からない。そんなことは気にせず、母は話し続ける。