ドブみたいな色の
蓮人くんの件で立ち直れていないのが原因だと思うけど、私を追い詰めるのにはじゅうぶんすぎる言葉だった。

私は自分の荷物を掴んで、美術室から逃げた。
片付けもしてないけど、そういう余裕はなかった。

後ろから誰かの声が聞こえたし、暫くは追いかけてきそうだったけど、逃げた。

好きなものが、好きな人が、全部嫌いになりそうだった。

走って家に帰った。
通った道とか、全然覚えていないけれど、気が付いたら家にいた。
親はまだ仕事だったから帰ってきてなかった。
課題のプリントの空欄を埋めて、お風呂に入って髪も乾かさずに布団にもぐった。


「うっ……くっ……」


堪えていた涙が、一気にあふれ出た。

もうやだ。
私よりつらい経験をしている人が、この世にたくさんいるのは知っている。
でも、今、私はとてもつらい。

顔に枕を押し付ける。

……やだよ。
もう、何もしたくない。

蓮人くんと蓮人くんのカノジョが、ドブの色と言って笑っていた同級生が、ぐるぐるぐるぐると頭の中で何度も何度も。
何度も何度も。

ウザいウザいウザいウザいウザい!!
私の頭の中から出て行ってよ!!
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私の好きな人は、世界を救う勇者らしい。 王様が、そう言っていたらしい。 「俺、旅に出なきゃいけないんだ」 私の好きな人は、私を村に置いて、一人で行ってしまった。 ※この物語はフィクションです。 実在する人物や団体、事件等には一切関係ありません。 ※暴力的な表現があります。

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