許嫁のパトリシアは僕をキープにしたいらしい
「えっと……比較検討して僕がいいって思ったの?」

 瞳を揺らして遠慮がちに彼が聞く。

「どっちがいいのよ。最初から好きだったのに当てつけで別れるなんて言った場合と、比較検討した結果の場合」
「えー……」
「好きな方にしてあげるわ」
「なんだよそれ」

 彼が私と手を繋ぎながら考え始めた。

「うーん、比較検討かな」

 好きって感情より打算のがいいってこと!?

「どうしてよ」
「誰かと比べていいって思ってもらえたのなら、また別れる可能性は低くなるかなって」

 照れくさそうに彼が笑う。

 別れるなんて言葉を出してくれたことに嬉しくなる。今は恋人だと認識してくれているってことだ。

「それなら、そっちにするわ」
「よく分からないな」

 どうしてそんなに穏やかにしていられるのだろう。私なら「ハッキリしなさいよ」と怒りそうだ。

「とにかく今は恋人に戻ったの!」
「うん」
「だからあなたに義務を課すわ。私に会うたびに必ず一度は手を握ること!」

 重なり合った手を見て不思議そうにアクアが笑う。

 たぶんこれからも、思っていることがすれ違うことは多いだろうけど――。

「アクアも、私に何か義務を課してちょうだい」
「ええー……別に義務なんて……」
「義務を課さなきゃ駄目。一方的なのはイヤ」
「うーん……」

 考えながら頬を染めてくれる。今、やっと少しは好かれていると自覚できたかもしれない。

「さっきの、嬉しかったから。気が向いた時に好きだって言ってほしいかな。嫌じゃなければね」

 やっと両想いになれたのかもしれない。

「アクアも言って。私だけ言うのはイヤ」
「分かったよ。大好きだ」
「……大好き」

 手は繋いだまま、離さない。

 好きだと言わせたのは私だ。デートだって私から誘うだけ。彼からなんて一度もない。私が動かないと何も始まらない。

 せめて、初めてのキスはアクアからしてよね!

 そんな願いを込めて、ぎゅっとアクアの温かさを感じるその手に力を込めた。

「次にまた僕がキープに戻るのはいつかな」
「……戻らないように私を射止めてよ」
「僕には無理だよ」
「もう射止めてるの!」
「ええ〜?」

 まだまだズレている私たちだけど、大きく前に進んだ気はする。

 ――だってほら。

 反対側の手で、アクアの腕に絡みつく。

「わっ」

 きっと私たちは恋人たちの顔をしている。もう吹っ切れた。これからは変な強がりなんてしない。

 ――強制的にイチャついてやるんだからね!

 
【完】
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