高貴な財閥夫婦の秘密
「ん…知…く……」

知嗣の手と勘違いしているようで、那留の手を引き寄せ握りしめた。

「ちょ…梨良……!」

離そうとすると「んん…や…!!」と更に引っぱられる。

しかたなく那留が、力づくで離そうとすると………
「お待たせ!
梨良と美奈起き………ん?
ちょ…那留!!君、何してるの!!?
言ったよね!?梨良に触らないでって!!」

「あ、いや、こ、これは!!不可抗力なんだよ!!
梨良がお前と間違って、俺の手を………」

「は?
梨良が悪いっていいたいの!?」

「いや、そんなつもりは……」

「とにかく、離してよ!!」

「だからぁ!梨良が離してくれねぇの!!」

「だから!力づくでやればいいでしょ!
梨良の力なんて、子どもみたいなもんなんだから!」

那留が梨良の手を強引に離すと、パチッと梨良が目を覚ました。
「んん…知くん?」

「梨良、起きたみたいだね!」

「あ…ごめんなさい…寝てた…」

「ううん!
もうすぐ着くから、休憩してランチ食べておこ?」

「うん!
知くん達、買ってきてくれたの?」
伸びをして、微笑む。

「うん!
見て?梨良の好きな、玉子サンドだよ!」

「わぁ〜美味しそう!
ありがとう!」

美奈も起こして、四人は車内でサンドイッチを食べ始める。
「あ!美奈さん、ありがとう!」

「………え?何?」

「寝てる間、ずっと手を握っててくれたでしょ?
とっても安心したから!」

「え?私も寝てたし、手は握ってないと思うよ?
あ、それとも私、寝ぼけて梨良の手を握ったのかな?」

「え?そうなの?
あれ?
うーん…でも、確かに美奈さんの手にしては大きかったような……」
美奈の手を見つめ、言った梨良。

那留が隣から凄まじい視線を感じ知嗣の方を見ると、案の定知嗣が冷たい視線で睨みつけていた。

“不可抗力だ!” 
口パクで言う、那留。

知嗣はただ、絶対零度の視線を那留に送っていた。

「…………あ!もしかして!!」

「ん?」

「知くんなの?」

そこに、梨良が声をかけてくる。
「ん?」

「知くん、手を握っててくれたの?」

「あ…」

「ありがとう!
フフ…やっぱ、知くんが傍にいると安心する!」

完全に勘違いしたままの、梨良。
知嗣は微笑み返した。

それは那留だよなんて、シャクだし。
そうゆうことにしておこっと。

そしてそんなことを考えていた。

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