高貴な財閥夫婦の秘密
「………」
「………」
「………」
「梨良?どうしたの?」

ふと、知嗣が梨良を見ると、静かに涙を流していた。
優しく目元を拭いながら、顔を覗き込む。

「知くん」
「ん?」

「幸せ?」

「…………え?」

「那留くんや美奈さんも、今幸せ?」

「梨良?」
「どうしたの?」

「みんな、ちゃんと幸せ?」

「どうしてそんなこと聞くの?」

「………」

「梨良?」

「頭の良い知くんに質問があります」

「え?」

「私達は、これからもずっと……
…………ずっと、このままでいれるのかな?」

「…………いれるよ、大丈夫」
即答出来なかったが、できる限り安心させるように微笑んだ知嗣。

「………」

「梨良?」

「嘘つき」
梨良が呟いた。

「え……」

「知くんの顔、大丈夫って顔じゃない!」

「梨良…」

「こんな苦しい嘘、つき続けるのなんて無理だよ…」

「梨良?」

「私は、知くん達みたいに強くない。
今も不安で、胸が破れそうになるくらいに痛い。
なんだか、予感がするの……
いつか、知くんと離ればなれになるんじゃないかって………」

「梨良…」
美奈も、思わず切なくなる。

「……………そんなことさせないよ」
それを払拭するように、知嗣が言い放った。

「知くん…」

「俺だって、させねぇよ!!」

「那留くん…」
「那留…」

「そんなこと、絶対にさせない……!
僕が無理だもん。梨良と離ればなれになるなんて」

「あぁ!
トモの言う通りだ……!!」

知嗣と那留の力強い声色と言葉に、梨良と美奈も頷いた。

しかし、四人の心の中は………
“不安”しか残らなかった。

そして………ベッドに入り、それぞれ抱き締め合って眠りについた四人。

「んん…」
しばらくして、美奈が目を覚ました。
一度起きて水を飲み、また那留の腕の中に戻った。

なんだか寝れなくて、那留を見つめていた。

すると隣のベッドでゴソゴソ音がしだす。
少し乗り出して見ると、知嗣が眠っている梨良の額や頬にキスを繰り返していた。

そしてしばらくキスを繰り返すと、頭を撫でたり、髪の毛をくるくるして遊んだりし始めた。

思わず美奈が「フフッ…」と噴き出す。

「え?美奈?
ごめん、起こした?」
知嗣が、びっくりしたように美奈を見た。


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