高貴な財閥夫婦の秘密
美奈はそれから大事を取って、三日間休んだ。

その間梨良が、三食の食事を作ってくれた。
(朝食と夕食は、那留の分も)

そして四日目の朝。
すっかり身体も回復し、那留と朝食をとっていると……

リビングのドアからノックの音が響き「那留くーん!美奈さーん!」と梨良の声が聞こえてきた。

「ん?入れよ!」
「梨良?どうぞ~」

那留と美奈が声をかけると、梨良と知嗣が微笑み入ってきた。

「郵便だよ!」
梨良がポストに入っていた封筒などを持ってきた。

「ん。
てか、後で俺達が玄関降りた時で良かったのによ(笑)」

いつもは玄関で別れる時に渡してくるのだが、今日は美奈の様子を窺うために上がってきたのだ。

「だってー、美奈さん大丈夫かなって!」

「梨良。
本当に元気になったよ!梨良のおかげ!ありがとう!」

「良かった!知くん、良かったね!」
「そうだね」

「つか、なぜにトモまでついてきたの?(笑)」

「だって!知くんと少しの時間も離れたくないんだもん!
今日も知くんお仕事だし…」

笑っている那留に、梨良は怒ったように言い返す。
那留と美奈は、クスクス笑うのだった。

「じゃあ、後でね!」
知嗣と梨良が、リビングを出ていく。

美奈は郵便の手紙を一つ一つ確認していると、あるハガキを見て動きが止まった。

「ん?美奈?どうした?
…………子ども?
あー“子どもが生まれました”ってやつ?
へぇ~、今時ハガキで送る奴いんのな?(笑)」

「………」
(最近、多いな……)

最近、メッセージやハガキなどでよく結婚や出産の報告を受けている美奈。

結婚報告は良いのだが“出産報告は”美奈に、鋭い痛みを与え続けていた。

美奈は、那留を見つめた。

「ん?」

「ううん…」

「変な奴(笑)」
首を傾げ、笑う那留。

欲しいな……
私も、那留との赤ちゃん……

そんなの、絶対無理なことはわかっている。
“それも”覚悟して、この秘密の生活を続けているのだから。

那留とのセックスも、避妊は気をつけている。

でも……
でも……

例え、屋敷内だけでも那留の傍にいられたらいい。
それ以上、何も望まない。 
どんな辛いことも、耐える。

あの時そう思っていた。


でも最近、欲が出てきている――――――――

< 42 / 55 >

この作品をシェア

pagetop