高貴な財閥夫婦の秘密
梨良は、ワガママで甘えん坊。
でも、常に他人思いで、穏やかで優しい。

そして実は………四人の中で一番、この秘密の生活に関して“覚悟が出来ている”女性なのかもしれない。


あるランチ。
美奈は、梨良を誘ってイタ飯店に来ていた。

梨良がニコニコしている。
「初めてだね!
二人でお食事!」

「そうね!」

「えーと…何時までに戻らなきゃなの?」

「半まで大丈夫だから、あと…40分くらいかな?」

「OK!
じゃあ、急いで注文しなきゃ!」

メニューを見ている、梨良。
美奈は、梨良に声をかけた。

「梨良」

「んー?」
メニューを見ながら返事をする。

「梨良は、知嗣さんとの子ども欲しいとか思ったりしないの?」

「…………え?」
梨良がゆっくり顔を上げた。

美奈は真剣な眼差しで、梨良を見据えていた。

「え?え?美奈さん?」

「ごめんね、唐突に…」

「子ども…
うん、そうだね。欲しいよ。
知くんの子なんて、きっと可愛いもん!」
梨良も真っ直ぐ美奈を見て答えた。

「そうだよね…」

そしてここでも、梨良は徹底的な一言を美奈に伝えてきた。

「でも“私達には無理だよね”」と。

その言葉は、美奈の心に真っ直ぐ刺さった。

「……っ…」


どうして、こんなに強いのだろう。
知嗣が言っていた時もそうだ。

“美奈さんの旦那さんは、知くんでしょ”

いつも知嗣にべったりで、よく泣いて、ワガママを言って甘えることも多い。

なのに、こうゆう事への覚悟は誰よりも強い。

よく考えたら、梨良のワガママはいつも“知嗣の傍にいたい”という理由のみだ。

結婚式、肺炎を起こしかけた初夜、知嗣が仕事に行く時、旅行の最終日。

全て―――――――

本当に、純粋に“知嗣の傍にいること”しか望んでいないのだ。


「……………梨良は、本当に“知嗣さんの傍にいられるだけで”良いんだね……(笑)」

「うん、そうだよ!
それ以上は望まないよ。
パパにもね、伝えてるよ。
“私は子ども産まない”って。
もちろんパパは納得してないけど、それだけは受け入れられないでしょ?
前にも言ったよね?
いくらパパでも“私達の心は自由に出来ないんだから!”って!」

そう言って、梨良は自身のロケットペンダントを握った。

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