The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
問題は、犯人が誰か、ではない。

それより大事なことは。

「…ルレイアに、何て言おうか」

「…」

それには、アシュトーリアさんも返答に困っていた。

どうオブラートに包んで伝えても…ルレイアが台風のように荒れることは明白。

ルレイアに唯一手綱をつけられるのはルルシーのみ。でも、そのルルシーが動けないとなると…。

…最早、ルレイアを止められる者はこの世にいない。

「…アシュトーリアさん。幸いなことに、ルレイアは今出張中ですし…この際、ルレイアの出張を延長させて、ルレイアに伝えるのは後日にした方が良いのではありませんか?」

犯人が分からない今の状態で、ルレイアを暴走させたらどんなことになるか。

ルレイアにとっては、疑わしい者は全員犯人だろう。

最悪、箱庭帝国との全面戦争に突入しかねない。

せめて、犯人が誰なのか確定してから…ルレイアに伝えた方が。

私はそう思ったのだが。

「…いいえ。今すぐ伝えた方が良いわ」

アシュトーリアさんは、冷静にそう言った。

今すぐ、だって?

「でも…アシュトーリアさん」

「私の可愛いアイズ。次期首領のあなたに、狂犬の飼い方を教えてあげましょう」

はい?

アシュトーリアさんは、にっこりと笑った。

「飼い主に牙を剥く利益より、飼い主に従っている利益の方が上回る状況を、常に作り出すこと。そしてもう一つ、大事なのは…」

「…何ですか?」

「怒り狂ったワンちゃんが、どうやっても首輪を引きちぎらなきゃ気が済まないようなら…飼い主は敢えて首輪を外してあげて、自分に牙を向けられないようにさっさと後ろに逃げること」

「…」

…つまり、あれか。

君子、危うきに近寄らず。

三十六計、逃げるに如かず。

そういうことなんだな。

成程。先人の知恵は偉大だ。

「下手に嘘をついて、ルルシーの安否を隠して…その結果、ルレイアを敵に回す事態だけは絶対に避けなきゃいけないわ。何がなんでも、私達はルレイアの味方でなくては。あの子を敵に回して平気な顔をしていられるのは、あの無謀な帝国騎士団長くらいよ」

全くだ。

私なら、絶対にルレイアを敵に回そうなんて思わない。

ルレイアを敵にするくらいなら、憲兵局の方がまだましだ。

「だから、すぐにルレイアに伝えてちょうだい。その上であの子が暴走したら…ルレイアの敵に回らないように、上手くお手伝いしましょう」

うふふ、と笑うアシュトーリアさん。

笑い事ではないと思うのだが?

まぁ…暴走する機関車と正面から立ち向かうよりは。

暴走する機関車と並走して走る方が、現実的ではある。

…どっちも無謀ではあるけどね。

「…分かりました。では…今すぐルレイアに伝えます」

「えぇ、お願い。私は…ルルシーの様子を見に行くわ。あの子は私の大事な息子だもの」

そう言って、アシュトーリアさんは急ぎ足でルルシーのもとに向かった。

で…残された、私とアリューシャとシュノだが。

私達には、まだ大事な問題が残っている。
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