The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
思えばフューニャは、高いものを欲しがる女性ではなかった。むしろ、安く済ませられるなら、出来るだけ安く済ませようとしているようだった。

一緒にスーパーに買い物に行ったときも、その日に消費するものなら値引きシールがついたものを選んで買うし。

ここで買うと20円高いから、よそで買う、と言ったり。

俺に言わせれば20円くらい大した差ではないと思うのだが、そんなことを口に出そうものなら、無駄遣いだとか家計のやりくりだとか、くどくどと説教された。

思えばフューニャは、生まれが貧しかったから…そういうところは徹底しているのかもしれない。

しかしそんなフューニャも、高いものを欲しがるときがあった。

何を欲しがるのかと言うと、キッチングッズである。

鍋とかフライパンとか、包丁とか。

そういうものにお金をかけることは、決して散財だとは思わない。だってキッチングッズは、自分の為じゃなくて、家族の為のものだから。

いつも美味しい食事を用意して待っていてくれるフューニャを思えば、多少の出費は痛くない。

しかもそれだって、べらぼうに高い訳じゃないし。

それに、ちょっとお高い台所用品は、一度買うと長く使えるから、結局収支としては変わらないのだ。

さて、少し横道に逸れてしまったが。

とにかくそんなフューニャであるから、プレゼントを選ぶのは難しかった。

高級嗜好で散財する妻でなかったのは有り難いが…でも、こういうときはちょっと困るよな。

何をプレゼントしようかなかなか決められず、暗礁に乗り上げかけたところだったが…。

ヒントをくれたのは、俺の上司と、その相棒であった。





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