The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「ルレイア殿…。助言には感謝します。でも…俺はそのやり方には賛成出来ません」

「ほう、何故?」

だって、あまりにも…そのやり方は、乱暴過ぎる。

殴って言うことを聞かせるなんて。

そのやり方じゃ…。

「…そのやり方じゃ、俺は憲兵局と同じになってしまいます」

恐怖と痛みによって人を縛る。自由を平和を容赦なく奪い取る。

祖国のそんなやり方に嫌気が差して、俺は革命を起こしたんじゃなかったのか。

それなのに、俺が同じことをやったんじゃ…何の意味もない。

「俺はそんなやり方はしたくありません…。それに、恐怖によって戦う兵士より、志を持って戦う兵士の方が、強いに決まっています。…そうじゃありませんか?」

「…知りませんよ。俺は綺麗事は大嫌いな主義なんでね」

「…」

綺麗事…か。

俺の言っていることは、所詮綺麗事。

その綺麗事で…祖国が救えるのだろうか。

いや…俺は、救えると信じている。信じなきゃいけない。

ここまで来たからには。

「憲兵局とは違うやり方で、俺は祖国を助けたい。恐怖で仲間を従わせるんじゃなくて、志を同じくして共に戦いたい。孤独なリーダーにはなりたくないんです」

「…」

「そう思うのは…いけませんか。ルレイア殿…」

ルレイア殿は、険しい顔で俺を見つめていた。

綺麗事が嫌いなルレイア殿には、理解しがたい考えなのだろう。

「…まぁ…やり方は一つじゃありませんからね。あなたがそうしたいって言うんなら、そうすれば良いんじゃないですか?俺は自分だったらどうするか、を答えただけで…。必ずそうしろとは言ってませんし」

「ルレイア殿…」

「あなたは俺の意見を聞いて、『自分だったらそうはしたくない』ってことが分かったんでしょう?立派な進歩じゃないですか。あなたはあなたのやり方を貫けば良い。良かったですね、これでまた一つ、馬鹿を卒業しましたよ」

「…!」

俺も驚いたし、ルルシー殿も驚いていた。

ルレイア殿が…そんなことをするなんて。

まさか…本当にルレイア殿は、素晴らしい良い大人だというのか。

「ルレイア…お前、ろくでもない大人だと思ってたが、意外に良い大人だったのか…」

ルルシー殿もこの台詞である。

「ちょっとルルシ~?俺は良い大人だってさっきから言ってるじゃないですか~。信じてなかったんですか?」

「あぁ…正直、お前ほど悪い大人はいないと思ってたよ…」

「ひどーいルルシー。俺はこ~んなに純真無垢なのに~」

「純真無垢ではないな…」

ルレイア殿、酷い言われようだが。

「とりあえず、これで答えは分かったでしょう。俺はこれからルルシーと大人デートしてきますから、もう行きますよ」

「あっ…はい。ルレイア殿…本当にありがとうございました」

「いえいえ、お気になさらず」

「…大人デートって、何だよ」

ルルシー殿を呟きを無視して、ルレイア殿はルルシー殿にくっついたまま退室していった。

…とても大事なことを、教えてもらった気がする。
< 210 / 791 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop