The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
でも、今は…そういうことではなくて。

「分かってますよ。そういうことじゃないんでしょう?」

「あ、えと…」

「そうですねぇ、俺だったら…俺はまぁ、素直で親切で心優しい大人なので…。とりあえず、ぶん殴って言うことを聞かせます」

素直で親切で心優しい大人とは、いかに。

隣にいたルルシー殿も、ずるっ、とずっこけていた。

「まず全員を一ヶ所に集めて、こっぴどく説教します。平和ボケした連中は絶対それだけじゃ効かないので、二、三人見せしめにボコります」

何だって?見せしめにボコる?

なんて乱暴なやり方だ。

「で、でもそんなやり方では…」

「するとあなたを批難する人間が出てくるはずなので、そうするとしめたもの」

何が?

「文句ある奴は前に出ろ、と脅して、出てきたら遠慮なく袋叩きにする。完膚なきまでに打ちのめされたら、やる気も出るでしょう。憲兵局に立ち向かうのと、リーダーにぶちのめされるのとどちらが良いか、選ばせてやれば良いんです」

「…」

「これぞ、素晴らしき大人な対応。いやぁ俺は立派な大人の鑑ですね。ねっ、ルルシー」

「…」

「…あれぇ?何で黙るんですかルルシー」

「…そうだな」

ルルシー殿は遠い目をしていた。やっぱり見なかったことにした。

こ、これが…立派な大人?

要するに、殴って言うことを聞かせろ、と?

「人間を支配するには恐怖が一番手っ取り早いですからね」

「し、しかし…ルレイア殿。恐怖で仲間を支配するなんて…」

「あなたは何がしたいんですか?お仲間と仲良くなりたいんですか?違うでしょう?革命を完遂するという目的を果たすだけなら、お仲間に好かれる必要はない」

「それは…」

確かに…そうかもしれないけれど。

「目的を見失ってどうするんです。仲間に好かれたいのは勝手ですけどね、このままじゃ革命を果たすという一番の目的すら果たせなくなるんですよ。それで良いんですか?」

…良くない。

良くないから、今こうして…ここに来ているんだ。

ルレイア殿に相談する為に。

「お仲間を使い物にしたいなら、恐怖によるドーピングをしてでも働かせることです。出来なかったらどうせ死ぬんですからね」

…生きていたいなら、憲兵局と戦え、と?

ルレイア殿の理屈は分かる。ある意味では…一番正しい方法なのだろう。

でも…俺はどうしても、彼のやり方に賛成出来なかった。
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