The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「国民を人質にとって…。そうすれば革命軍にも手が出せまい」

「そ、そうか…。そうすれば良い。そうすれば我々が負けることはない」

破れかぶれで出てきたのは、そんな非道極まりない手段。

いかにも…憲兵局らしいとも言えるが。

何処までも、自分のことしか考えていない。

おまけに短絡的だ。そんな方法で革命軍を追い返したって…破滅は目に見えている。

憲兵局はもうおしまいなのだ。国民を敵に回し過ぎた。

その上で、国民を人質に取るなんて…。

すると。

「こ、降伏すべきです…。このままでは我々は皆殺しです。降伏して、革命軍に和解を…」

私と同じ歳くらいの、若い憲兵局員が、勇気を出して震えながらそう意見した。

しかし、古参局員はそれを許さなかった。

「貴様!何を弱腰なことを」

「で、では他にどうするのです!人質を取って、目先の革命軍を追い返すことが出来ても…!革命軍と『青薔薇連合会』、帝国騎士団、更には箱庭帝国の全国民を敵に回すことになるんです!そうなれば我々はいずれ終わりです…!」

「…!」

皆、そんなことは分かっている。

言われなくても、薄々理解していたはず。

それでも…改めて現実を突きつけられることに、耐えられなかった。

「だったら…せめて、これ以上犠牲が増える前に…」

「馬鹿なことを!誇りある憲兵局を、我らの代で終わらせると言うのか!」

「そうだ!卑劣な革命軍など、我々が粛清してやるのだ」

「すぐに帝都を固めろ。守るのは帝都だけで良い」

私は何も言わず、ただただ局員達が顔面蒼白で会議を行うのを眺めていた。

…馬鹿な男共。

降伏を訴えた若い局員は、何も言えずに俯いてしまった。

彼が何を言っても…古参局員に受け入れられるはずがなかった。

古参局員は、今までずっと憲兵局員としての利権にどっぷりと漬かって生きてきた。

彼らはもう…それにすがることでしか生きられないのだ。

…本当に、憐れな男達だ。

私は、ちらりと大将軍の方を盗み見た。

彼は何を考えているのだろう。

国民を人質に帝都に籠城することに対して、大将軍は何も言わなかった。

私と同じように、沈黙を守っていた。

部下が破滅に走っていこうとするのを、止めはしなかった。

このまま自分が潰えても良いと思っているのか?

まさか…自分が統治する憲兵局が、このまま終わって良いなんて思ってはいないと思うが。

「同志大将軍、帝都に立て籠りましょう。人質を取って…。我々はまだ負けていません!」

「…分かった」

破れかぶれの部下の方策に、反対することもなかった。

…この男、本当に…帝都を焼け野原にするつもりなのか。

当然、私はこんな馬鹿げた作戦を看過するつもりはなかった。
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