The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
ルアリスに対して、私は、ルレイアが土壇場で裏切るかもしれない、という警告をした。

あいつは以前、実際にそれをやったのだから。

でもルアリスは、ちっともルレイアを疑ってはいなかった。

私の忠告を聞き入れはしたけど、全く心配はしていないようだった。

…どうして、あの男を無条件に信じられる。

あの男ほど、信用ならない者はいない。

実際、ルレイア率いる『青薔薇連合会』は、憲兵局にとっても大きな脅威だった。

『青薔薇連合会』はマフィアだ。烏合の衆である革命軍とは違って、戦い方を知っている。

しかも、烏合の衆であった『青薔薇解放戦線』の兵士を、事前に帝国騎士団と『青薔薇連合会』が訓練したという話ではないか。

付け焼刃ではあるが…これで、敵は全くの素人…という訳にはいかなくなった。

そう簡単にはやられてくれない連中だ。

そこに、戦いのプロとも言える『青薔薇連合会』が加わる。

正直言って、憲兵局の勝機は絶望的だった。

まずもって、兵士の頭数が足りない。

これに対抗して、憲兵局も臨時に兵士を募集した。

とはいえ、兵士に支払われる給料は、ほんの僅かな配給券のみだった。

たったそれだけの報酬で、どうして憲兵局を守る為に戦う気になれるだろうか。

もっとたくさんの配給券を渡すなり、待遇の改善を約束すれば良いものを。

この度の革命で、隣国のルティス帝国から重い経済制裁を強いられている状況では…これが限界だった。

そんな状況で、どうして憲兵局の味方をする国民がいるだろうか。

おまけに、今頃になって革命の余波が国内に及びつつある。

国民達の中に、「もしかして自分達は、長年の圧政から解放されるのではないか?」という意識が生まれつつあるのだ。

今までずっと抑圧されていた国民の反憲兵局感情が、徐々に高まってきた。

小さいものではあるが、憲兵局に対するクーデターも起きた。

当然クーデターは鎮圧され、関係者は全員公開処刑された。

憲兵局はこれを見せしめにしたかったようだが、この状況で公開処刑は、むしろ国民の反国家感情を煽るだけだった。

国内にも革命の動きが見られている中、彼らの英雄である『青薔薇解放戦線』が祖国に凱旋し、憲兵局と戦うとなれば、どうなるか。

どれだけの国民が、革命軍に寝返るだろうか。

ただでさえ数的劣勢な状況なのに、これ以上敵が増えたとしたら。

もう八方塞がりなのだ。憲兵局は。

私達に出来ることは、一つだけ。

『青薔薇解放戦線』に頭を下げ、憲兵局を解体することを条件に、和平の申し入れをすること。

国民を解放し、祖国を開国する。もうそうするしかない。

戦って負けたくないなら、戦う前に負けるしかない。

国土を血で汚し、無益に国民を死なせたくないなら…今すぐに、そうするべきだった。

それなのに。

それなのにこいつらは。

この期に及んで、自分の命と立場を守ることしか考えていなかった。

「…国民を、人質にすれば良い」

あまつさえ出てきたのは、そんな最悪の手段だった。
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