The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
その本は所謂、伝記であった。
とある国で、英雄と呼ばれた人物の伝記。
とはいえその伝記の物語は、いつの時代の話なのか、どの世界の話なのか。
そもそも、これは現実に起きたことなのか、それともただのフィクションなのかさえ、分からなかった。
けれどそんなことは、俺には関係なかった。
伝記の主人公である英雄は、正義の人であった。
一般人がどれだけ背伸びしても届かないような、高貴な生まれと立派な役職を持っていながら。
彼はそれを擲(なげう)って、弱者の為に粉骨砕身し、悪を正し、正義を行った。
弱者など無視しておけば、自分の立場は一生安泰に終わっただろうに。彼は自分の安楽な人生よりも、弱者を救うことを選んだ。
成功するかも分からない、革命という手段を選んだ。
その勇気と、正義の心の、なんと尊いことだろう。
結果として彼の革命は成功し、弱者は救われ、国は平和を取り戻した。
俺はその伝記を読んで、感動すると共に、じゃあ、自分はどうなのか?と考えた。
考えてみれば、俺はその英雄と酷似した立場にあるのだ。
何もしなければ。何も考えず、父と同じ道を行けば、俺の人生は安泰そのものだ。何も問題はない。
けれども、俺はその本を読んで、気づいてしまった。
上に立つ者の安楽な暮らしのその下で、苦しみに喘いでいる人々が大勢いることに。
彼らの血と涙を啜るようにして、俺達の生活が成り立っていることに。
今まで気づかなかった、見ないようにしていたことが、見えるようになった。
父は自分の立場に物を言わせ、やりたい放題好きなことをやっていた。
国中が飢えて死にそうになっていても、我が家にだけは溢れるほどの食糧と酒がある。
少しでも気に入らない者、気に障った者は、口実をつけて収容所に送り込むか、あるいは処刑してしまう。
それが当たり前だと思っていた。
でも、それは決して、当たり前じゃないのだ。
その本の英雄が、俺に気づかせてくれた。
俺達が虫けらのように踏みつけている人間は、俺と同じ人間なのだということ。
少し生まれが違っていたら、立場が全く反対になっていてもおかしくなかったこと。
誰にも幸せになる権利があり、そして誰にも、誰かを虐げる権利などないこと。
悪から目を逸らさず、不平等を正し、命を尽くして正義を為す。
その崇高な志こそが、歴史を作るのだということを。
とある国で、英雄と呼ばれた人物の伝記。
とはいえその伝記の物語は、いつの時代の話なのか、どの世界の話なのか。
そもそも、これは現実に起きたことなのか、それともただのフィクションなのかさえ、分からなかった。
けれどそんなことは、俺には関係なかった。
伝記の主人公である英雄は、正義の人であった。
一般人がどれだけ背伸びしても届かないような、高貴な生まれと立派な役職を持っていながら。
彼はそれを擲(なげう)って、弱者の為に粉骨砕身し、悪を正し、正義を行った。
弱者など無視しておけば、自分の立場は一生安泰に終わっただろうに。彼は自分の安楽な人生よりも、弱者を救うことを選んだ。
成功するかも分からない、革命という手段を選んだ。
その勇気と、正義の心の、なんと尊いことだろう。
結果として彼の革命は成功し、弱者は救われ、国は平和を取り戻した。
俺はその伝記を読んで、感動すると共に、じゃあ、自分はどうなのか?と考えた。
考えてみれば、俺はその英雄と酷似した立場にあるのだ。
何もしなければ。何も考えず、父と同じ道を行けば、俺の人生は安泰そのものだ。何も問題はない。
けれども、俺はその本を読んで、気づいてしまった。
上に立つ者の安楽な暮らしのその下で、苦しみに喘いでいる人々が大勢いることに。
彼らの血と涙を啜るようにして、俺達の生活が成り立っていることに。
今まで気づかなかった、見ないようにしていたことが、見えるようになった。
父は自分の立場に物を言わせ、やりたい放題好きなことをやっていた。
国中が飢えて死にそうになっていても、我が家にだけは溢れるほどの食糧と酒がある。
少しでも気に入らない者、気に障った者は、口実をつけて収容所に送り込むか、あるいは処刑してしまう。
それが当たり前だと思っていた。
でも、それは決して、当たり前じゃないのだ。
その本の英雄が、俺に気づかせてくれた。
俺達が虫けらのように踏みつけている人間は、俺と同じ人間なのだということ。
少し生まれが違っていたら、立場が全く反対になっていてもおかしくなかったこと。
誰にも幸せになる権利があり、そして誰にも、誰かを虐げる権利などないこと。
悪から目を逸らさず、不平等を正し、命を尽くして正義を為す。
その崇高な志こそが、歴史を作るのだということを。