The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
ルレイアよりは、落ち着いているとはいえ。

俺だって、思うところが全くない訳ではない。

死神モードにはならないけど、ルレイアを傷つけやがった暗殺者が今目の前にいたら、正気ではいられないだろうし。

俺の相棒を傷つけてくれたのだから、ただで済ませるつもりはない。

ぶっ殺してやりてぇ、とも思う。

俺がこんなに冷静でいられるのは、暗殺者に対する怒りよりも、自分の不甲斐なさを悔いているからだった。

…みすみす、ルレイアを傷つけさせてしまった。

事が起こる、ほんの15分ほど前まで…傍にいたのに。

俺はルレイアの相棒なのに。守ってやることが出来なかった。

俺が憲兵局の手の者にかかったとき、ルレイアもこんな気持ちだったのかな。

ルレイアが死神と化したのも分かる。

それぐらい腹が立つし、それ以上に自分の不甲斐なさに腹が立つ。

…革命の反動かな。

無意識のうちに、平和ボケしてしまっていたのかもしれない。

だが、反省をするのは後だ。

それより今は…その暗殺者の特定を急がなくては。

「…まぁ、帝国騎士団がルレイアを襲う…気持ちは分かるけど、実行に移す馬鹿がいるとも思えないんだよね」

と、アイズレンシア。

俺もそう思う。

そんなことはまずオルタンスが許さないだろうし…。

「あれじゃね?なんかルレ公の後釜で、正義厨の若造がいるんでしょ?ルレ公が煽りまくってた人」

「ん…?ルーシッドのことか?」

「そんな名前なの?知らねーけど、そいつがまた正義厨拗らせて、ルレ公を襲ったんでね?」

ルーシッドが暗殺者…ってことか。

有り得ない訳ではない…が。

「…考えなしにそんなことをする人間だとは思えない。ルーシッドは確かに正義厨ではあったけど…でも、自分の立場は弁えていた」

ルレイアを殺せばどうなるか、分からないルーシッドではないはず。

感情に任せて突発的に…というのも考えられない。

ルーシッドをそこまで駆り立てる何かがあったというなら、話は別だが…。

「私見だけど…私も、帝国騎士団は関与してないと思うよ。今回の箱庭帝国の革命で、帝国騎士団は『青薔薇連合会』のお陰で、自分達の手は汚さず、革命に協力した功労者として世間で持て囃されてる。その恩を仇で返すようなこと、オルタンスがするかな」

アイズはそう言った。

さすがに「マフィアが革命に協力しました」なんて、表社会では報道出来ない。

だから世間一般では、俺達『青薔薇連合会』が革命に協力したことは知られていない。

代わりに、革命に協力したのは帝国騎士団だということになっている。

手柄を譲ってやった訳だ。

その恩を仇で返す…。まぁ、あのオルタンスならやりかねないとも思うが…。でも、そんなことをする理由が奴にあるだろうか。
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