The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…やっぱり、おかしい」
「…若旦那様…」
その日も俺は、トミトゥから庶民の話を聞いて、そう思った。
何で、彼女達は…病気や怪我を患ったくらいで、配給券を止められなければならないのか。
配給券を止められたら、この国では生きていけない。
死ね、と言っていると同じだ。
国の為に働いて傷ついた者に、何故報いてやらないのか。
こんなことは、間違ってる。
「若旦那様…。そのようなこと、決して旦那様には話してはいけませんよ」
「…」
トミトゥに言われるまでもなかった。
俺の父は根っからの憲兵局員。箱庭帝国主義の人間だ。
箱庭帝国のやり方が間違ってるなんて言おうものなら、ぼこぼこに殴られるだろう。
でも、今ここに父はいない。
「…誰かが、正義を行わなければならないんだ」
俺は、こっそり持ち出したあの伝記を思い出した。
間違ってることを、間違ってると言えない国に、未来はない。
誰かが、正さなければならないのだ。
あの伝記の、英雄のように。
「若旦那様…。そんな、危険なことを…」
「分かってる。分かってるけど…でも」
このままで良いはずがないのだ。
この国に蔓延る理不尽と不平等を一掃しなければ。
人間である限り、誰でも持っている権利を…幸せになる権利を…誰もが享受しうる国にしなければ。
トミトゥのような弱者は、永遠に救われない。
「このままで良いはずがないんだ」
「…」
…だからと言って、俺に何が出来るだろう。
十歳かそこらの子供に。
俺がいくら正義を訴えたところで…誰が俺の声なんて、聞いてくれるだろう。
自分の父さえ怖がって、何も言えないのに。
「誰かが…。いつか誰かが、声をあげないと…」
いつか。誰かが。
あのときの俺は、愚かだった。
いつか誰かが、この国を救ってくれることを期待していた。
正義を為す人が、いつか生まれてくれることを。
あの伝記の英雄のような人が、いつか出てくることを。
それが大きな間違いであることに、気づいていなかった。
「…若旦那様…」
その日も俺は、トミトゥから庶民の話を聞いて、そう思った。
何で、彼女達は…病気や怪我を患ったくらいで、配給券を止められなければならないのか。
配給券を止められたら、この国では生きていけない。
死ね、と言っていると同じだ。
国の為に働いて傷ついた者に、何故報いてやらないのか。
こんなことは、間違ってる。
「若旦那様…。そのようなこと、決して旦那様には話してはいけませんよ」
「…」
トミトゥに言われるまでもなかった。
俺の父は根っからの憲兵局員。箱庭帝国主義の人間だ。
箱庭帝国のやり方が間違ってるなんて言おうものなら、ぼこぼこに殴られるだろう。
でも、今ここに父はいない。
「…誰かが、正義を行わなければならないんだ」
俺は、こっそり持ち出したあの伝記を思い出した。
間違ってることを、間違ってると言えない国に、未来はない。
誰かが、正さなければならないのだ。
あの伝記の、英雄のように。
「若旦那様…。そんな、危険なことを…」
「分かってる。分かってるけど…でも」
このままで良いはずがないのだ。
この国に蔓延る理不尽と不平等を一掃しなければ。
人間である限り、誰でも持っている権利を…幸せになる権利を…誰もが享受しうる国にしなければ。
トミトゥのような弱者は、永遠に救われない。
「このままで良いはずがないんだ」
「…」
…だからと言って、俺に何が出来るだろう。
十歳かそこらの子供に。
俺がいくら正義を訴えたところで…誰が俺の声なんて、聞いてくれるだろう。
自分の父さえ怖がって、何も言えないのに。
「誰かが…。いつか誰かが、声をあげないと…」
いつか。誰かが。
あのときの俺は、愚かだった。
いつか誰かが、この国を救ってくれることを期待していた。
正義を為す人が、いつか生まれてくれることを。
あの伝記の英雄のような人が、いつか出てくることを。
それが大きな間違いであることに、気づいていなかった。