The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…ラシュナとヴァルタから、連絡は?」

「両名とも、かの組織に無事に潜入出来たとのことです」

つまり…予定通り成功したということだな。

…今のところは。

「分かった。このまま計画通り行こう。…くれぐれも気を付けてくれと伝えてくれ」

「かしこまりました」

「それと…ミルミルとヴィニアスの方はどうなってる?」

いかにラシュナとヴァルタが向こうで成功しようとも、ミルミルの交渉が上手く行かなければ、計画は進まない。

そちらも気がかりであった。

「向こうの感触は悪くないようです。このまま交渉を続けるとのこと」

「そうか…」

ひとまず、ほっとした。

このまま全てが上手く行けば良いのだが…。

「…『シュレディンガーの猫』のせいで、一時は計画が全てご破算になったかと思ったが…なんとか立て直せたな」

「えぇ。『猫』の件は、思ったより早くに片付きましたから…。さすがはルティス帝国の誇る帝国騎士団ですね」

「あぁ」

彼らの対応の早さには、随分と助けられた。

『シュレディンガーの猫』がルティス帝国に追放され、悪事を働いていると聞いたときは目眩がしたものだ。

箱庭帝国出身のあのマフィアがルティス帝国で暴れたら、ルティス帝国国民には反箱庭感情が生まれ、数年は消えなかったことだろう。

そうなれば、俺達の計画も数年単位で遅れてしまっていたはずだ。

けれど、思っていたよりずっと早くに…『シュレディンガーの猫』はルティス帝国から抹殺された。

ルティス帝国が誇る精鋭、帝国騎士団によって。

…しかし。

「…ユーレイリー。あの噂は本当なんだろうか」

「?どの噂ですか?」

「『シュレディンガーの猫』を抹殺したのは、実は帝国騎士団じゃなくて…ルティス帝国のマフィアだという噂だ」

「…にわかには信じがたいですね」

確かな情報は掴めなかった。表向きには…帝国騎士団が『シュレディンガーの猫』を葬ったと言っているが。

その裏には、ルティス帝国のマフィアが関与しているという噂がある。

噂の真偽は分からない。でも、もし、そうなのだとしたら…。

毒を以て、毒を制す。

マフィアを以て、マフィアを制す…ということなのだろう。

…やはり恐ろしいな、ルティス帝国は。

ともあれ…我が国ほどではない。

「…ユーレイリー。フューシャの行方はまだ分からないか?」

俺は話題を変える為に、彼女のことを尋ねた。

「はい…。誰からも報告が上がっていません。残念ながら…」

「…そうか」

およそ三年前、計画の先端を切り開く為に脱国した、俺の仲間。

二年前までは連絡が来ていた。しかし…ある日を境に、彼女からの連絡は途絶えた。

帝国騎士団に捕まったか、それとも憲兵局の手の者にかかったのか…。彼女の生死すら、定かではない。

でももし、生きているのだとしたら。

「引き続き、捜索を進めてくれ」

「かしこまりました。坊っちゃん」

…あの日の決意は、未だに変わっていない。

俺は、正義を為す。

この国に、真の平和をもたらす為に。
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