The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
俺と兄は仲が悪かった。兄は俺を憎んでいた。

でも、俺は兄を嫌いだった訳じゃない。

それに、俺は今までずっと父に贔屓してもらっていた。望んでそうしてもらった訳ではないけど、事実として、俺は兄より遥かに優遇されていた。

兄に対して、申し訳ない気持ちもあった。

だから、俺は身を引くことにした。

俺は帝国騎士官学校に入る。家督を継がなくても、将来は帝国騎士団でそれなりの地位が約束されている。

せめて、家督だけは兄に譲ってあげよう。

俺はそう思った。周囲からは多少反対されたものの、俺が「家督は兄に譲ってあげたい」と言うと、皆察したようだった。

兄が空気のような扱いをされていることを、親族達も皆知っていたから。

兄に対して、皆で同情していた。

有力な跡取り候補が自ら辞退し、もう一人の跡取り候補である兄を支持したこともあり。

兄は特に問題もなく、クレマティス家の当主になった。

父はあれほど俺が家督を継ぐことを望んでいたのに、そんな父を裏切るような真似をすることに、俺も多少なり罪悪感はあった。

でもそれより、少しでも兄に報いたかった。

今はもう父もいないのだから、俺達が仲違いする必要もない。

俺は自分から兄に歩み寄ろうと思った。兄の方からは絶対歩み寄ってこないことは分かっていたから。

それなのに。

兄が当主になり、家督相続の問題が落ち着いて間もなく。

俺が目にしたのは、父の位牌を床に薙ぎ倒す兄の姿だった。
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