The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
あの日俺は、父の位牌を乱暴に叩きつける兄の姿を見て、驚いて駆け寄った。

「兄さん…!何をやってるんですか?」

「…」

兄は俺を無視して、飾ってあった花を花瓶ごと薙ぎ倒した。

花瓶が粉々に砕け、床に花の残骸と花瓶の水が飛び散った。

「…!?」

一心不乱に破壊を続ける兄の剣幕に気圧されそうになりながらも、俺は必死に兄を止めた。

「兄さん!やめてください!」

「うるさいっ!」

腕を振るって払われ、突き飛ばされた。

見たことがないほど、激しい剣幕だった。

俺はいつも、ぼんやりしている兄しか見たことがなかったから…余計に驚いた。

「皆こいつが悪いんだ。俺は悪くない。全部こいつのせいだ!無責任に俺を見捨ててくたばりやがって。地獄に堕ちろっ!」

兄は父の遺影を叩きつけ、足で踏みつけた。

兄が父のことも憎んでいることは知っていたが、ここまでとは思っていなかった。

「兄さんっ…!」

父を憎む気持ちは分かるが、いくらなんでもそれはやり過ぎだ。

父はもう死んだのだ。死ねば皆仏ではないが…位牌を投げつけるなんてことまでしなくても。

「やめてくださいっ…。父さんを許せないのは分かりますが、いくらなんでも…!」

「黙れ!お前に何が分かる!」

位牌を踵で踏みにじった兄は、今度は俺の胸ぐらを掴んだ。

兄にしてみれば、俺は父と同罪なのだ。

「俺はお前なんかとは違うんだ。分かった風な口を利くな!何が帝国騎士官学校だ。何がクレマティス家の跡取りだ!それがそんなに偉いか!え!?お前はそんなに大層な人間だって言うのか!?」

「…!」

兄は、今までずっと腹の中に溜め込んでいたものを、全て俺にぶつけてきた。

兄が抱えていた黒い感情に、俺はたじろいだ。

俺が抵抗しないのを良いことに、兄は俺の胸ぐらを掴んだまま揺さぶった。

「ちょっと剣術が出来るからって、良い気になりやがって!俺に家督を譲って、情けをかけたつもりか!?何処まで俺を馬鹿にすれば気が済むんだ?お前なんか、父上の操り人形の癖に!」

「…」

俺は何も言い返せなかった。

俺が何を言い返したって、兄の神経を逆撫でするに決まっていた。
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