The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
会わせる顔なんてないと思っていた。

しかし…無責任に逃げ出すつもりもなかった。

やったことの責任は、自分で取らなくてはならないのだから。

「…大きくなったね、アイズ…。本当に」

「…もう二十年近くになるからね。前に会ったときから…」

私が最後に兄のルドウィカを見たのは、彼が家を出てティターニア家に奉公に行ったときだった。

あれ以来、一度も会っていなかった。

それも当然だ。あの後…我が家は、崩壊したのだから。

「元気そうで良かったよ」

「…兄さんこそ」

少し前まで、生きてるか死んでるかさえ、分からなかったんだからな。

私が調べなかっただけなんだけど。

「…まだティターニア家で働いてるとは思わなかった」

「フランベルジュ様に、随分良くしてもらったんだ。フランベルジュ様が帝都を離れるときも…一緒に連れていってもらった。僕はこのまま…一生ティターニア家に仕えるつもりでいるよ」

「…そう」

良かった。兄はティターニア家で…そこそこ良い待遇を受けているようだ。

貧民街出身の使用人ということで、いかように酷い扱いを受けてもおかしくなかった。

でも…兄は、運良く、優しい主人に出会うことが出来たようだ。

本当に良かった。

ほっとしたのも束の間、兄は禁断の話題に触れた。

「…あのさ、アイズ。その…他の家族について、何か知っていることはある?」

「…」

…ずっと、気になっていたんだろうな。

兄は我が家が一家心中したことを知らないのだ。あの場にいなかったのだから、それも仕方ない。

帰ったら家がなくなっていて、家族もいなくなっていた。

私以外の家族は一体何処に行ったのか。ずっと知りたかったんだろう。

そして、私はその答えを知っている。

言いたくはなかった。こんなこと、決して言いたくはなかったが…。

…言わない訳にはいかない。

「…私以外の家族は、皆亡くなったよ」

「…」

兄は、顔色一つ変えなかった。
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