The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…これは、弱いね」

書類を一目見たアイズレンシアは、眉をひそめてそう言った。

アイズも、俺と同じ感想だな。

更に、アシュトーリアさんも。

「そうねぇ…。共に肩を並べる条件にしては弱いわね」

「これだと…精々、経済支援をする程度だね。でも…その程度なら、やらない方がましだ。よその国の政府と遺恨を残すくらいなら」

最初から、手を出さない方がまし…か。

俺もそう思ったから、彼女の申し出を断った。

とはいえ…全く無関係、という訳にも行くまい。

「…厄介なことになったわね」

珍しく、アシュトーリアさんはしかめ面を隠さなかった。

その通りだ。厄介なことになった。

だって奴らは、確かめに来た、と言った。

そしてヴァルタの、あの引き際の良さ。

俺達が断ることを、ある程度予測していたのだ。

つまり…奴らは俺達に協力を断られたとしても、計画に大した支障はない。

ならあいつらは、『青薔薇解放戦線』だけで憲兵局と戦える?

その線は薄いだろう。国内に反抗勢力がどれほどあるのか知らないが、でも、憲兵局を一網打尽に出来るほどの戦力が、あの国にあるとは考えられない。

大体そこまで革命軍の勢力が強まっているなら、憲兵局がそれに気づかないはずがない。

何処かで必ず、憲兵局に見つかっているはずだ。

だから『青薔薇解放戦線』には、協力者が不可欠。

その協力者を国外に求めるのは、何ら間違ってはいない。国内に彼らに協力出来る者はなかろう。

その為、彼らは『青薔薇連合会』に声をかけたのだ。

でも俺達は断った。それなのに『解放戦線』は困っていない。

そもそもヴァルタは、元々交渉役には向いていないのだ。

彼女は革命が成功することよりも、自分が生き延びることを優先しているタイプだ。

何がなんでも、契約を取り付けて仲間になって欲しいという熱意もまるでなかった。

それなのに、『青薔薇解放戦線』のリーダーは、そのヴァルタを使者として俺達に寄越した。

リーダーとやらが、もし馬鹿ではないのなら…恐らく。

「俺の予想が正しければ…。奴らが交渉をしているのは、俺達だけではない」

俺達はあくまで、二番手か三番手なのだ。

交渉が上手く行けば御の字、でも上手く行かなくても別に良い。

だからヴァルタを寄越した。

奴らの本命は、別にある。

そしてその本命。

「このルティス帝国で、俺達と同じくらい力を持った、革命軍の後ろ楯として相応しい組織…」

「…」

この場にいる全員が、俺の言わんとすることを理解していた。

恐らく、『青薔薇解放戦線』の使者は…奴らのところにも行ってるのだろう。

糞忌々しい、俺の、元職場に。
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