The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…」

目敏くそれを見つけ、私はそのよれよれのジャケットを手に取った。

…これ、昨日ルヴィアさんが着てたものだ。

洗濯物はちゃんと洗濯かごに入れるように、とあれだけ言ってるのに…。こんなところに引っ掛けて、しかも忘れていくとは。

もう今日のお洗濯は終わってしまったというのに。

「…全くもう…」

困った人である。

でも私は、健気で謙虚な良い妻なので。

黙って、洗っておこう。

「…」

私はそっと、ルヴィアさんのジャケットを顔の前に持ってきて、ふんふん、と匂いを確かめた。

別に、彼の匂いを堪能したい訳ではない。

浮気チェックの一環である。

「…ふむ」

まず一番に感じるのは、ルヴィアさんの体臭。

次に、ルヴィアさんの香水の匂い。

ここまではセーフである。

更に、ルヴィアさんの上司さんの香水の香りも、微かにする。

ルヴィアさんの上司が独身であったら、彼も私の警戒対象になるのだが。

彼には既に、心に決めた夫がいるということなので。

しかもその夫、浮気は決して許さない質であるらしい。

よって、特に問題はない。

更に、ルヴィアさんのジャケットからは、そのルヴィアさん上司の夫の香水の香りもする。

ルレイアさん、という人だ。

彼は私の心の友である。

彼の香水の香りは非常に独特なので、すぐに判別出来る。

他には…男性の制汗剤の匂いを複数感じる。

これは恐らく、ルヴィアさんの部下だろう。

女物の香水、制汗剤、整髪料等の匂いは感じられない。

…うん。宜しい。

どうやらルヴィアさんは、私に隠れて他の女性といちゃついていたりはしていないようだ。

私の鼻は誰にも誤魔化せない。私の一族は、箱庭帝国で古くから占いやまじないを生業としてきた一族である。

そのせいか、私は生まれつき鼻が利く。ルヴィアさんには警察犬並みだと恐れられているが、実はそれ以上である。

ルヴィアさんが浮気していないことを確認して安心した私は、ルヴィアさんのジャケットを持って、バスルームに向かった。
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